芸術運動 · 1150年頃〜1500年代 · ヨーロッパ
ゴシック美術と中世絵画:ジョット、ドゥッチョ、ランブール兄弟
ゴシック美術とは、12世紀半ばに北フランスで始まり、その後100年ほどで西ヨーロッパ全体に広がった、中世後期のヨーロッパの美術様式です。中世絵画のなかでもゴシック絵画の画家たちは、教会や君主の宮廷のために、金地の祭壇画、板に描いた十字架像、壁画、装飾写本を制作し、細長い人物と流れるような衣のひだ、鮮やかな色彩と精緻な細部を描きました。チマブーエ、ジョット・ディ・ボンドーネ、ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ、シモーネ・マルティーニ、ランブール兄弟が代表的な画家です。
14世紀後半からは、色彩と金、自然の細部に富んだ宮廷風の国際ゴシック様式が、フランス、イタリア、ボヘミアの宮廷で花開きました。ゴシック美術は地域ごとに異なる時期にルネサンスへと移り、フィレンツェでは15世紀初め、北ヨーロッパではそれより少し後でした。ランブール兄弟がベリー公のために描いた祈祷書《ベリー公のいとも豪華なる時祷書》には、206葉に大きな細密画66点と小さな細密画65点が収められています。
下に並ぶゴシック美術の絵画と作品354点は、すべてパブリックドメインで、無料でダウンロードできます。
選定・執筆:Pavel Mazuelas2026年11月5日更新
ゴシック美術のすべての絵画と作品
祭壇画、装飾写本のページ、十字架像、中世の金工品やガラスに加え、ゴシック様式の教会を描いた後世の版画や素描も数多くあります。すべてパブリックドメインで、無料でダウンロードできます。
ゴシック美術の有名な絵画
1250年頃から1450年頃までの中世の祭壇画、装飾写本、フレスコ画です。作品をクリックすると、拡大して見たり、無料でダウンロードしたりできます。
ゴシック美術の代表的な画家
チマブーエ、ジョット、ドゥッチョからピサネッロ、ランブール兄弟、シュテファン・ロッホナーまで、ゴシック美術の中心となった10人の画家です。名前のリンクから、それぞれの作品をすべて見られます。
ジョット・ディ・ボンドーネ1265年頃〜1337年。ロンドン・ナショナル・ギャラリーが、イタリア絵画をビザンティン様式から解放した第一人者と呼ぶフィレンツェの画家です。代表的なフレスコ画の連作であるパドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂(アレーナ礼拝堂)の壁画は、おそらく1305年の少し前に描かれました。
ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ1278年から活動、1319年没。シエナを代表する画家で、その工房は何世代ものシエナの画家を育てました。1308〜1311年の両面の《マエスタ》は、史上最も大きく複雑な祭壇画の一つでした。
チマブーエ1240年頃〜1301/02年。ウフィツィ美術館が13世紀後半の中部イタリアで最も重要な画家と呼ぶフィレンツェの画家です。晩年の作品では、弟子ジョットの革新をビザンティンの伝統と融合させました。
シモーネ・マルティーニ1284年頃〜1344年。ドゥッチョの《マエスタ》の仕上げを手伝った可能性のあるシエナの画家です。シエナ市政府のために働き、義兄弟リッポ・メンミと工房を営み、晩年をアヴィニョンの教皇庁で過ごしました。
アンブロージョ・ロレンツェッティ1319年から活動、1348/49年没。ロンドン・ナショナル・ギャラリーによれば、兄ピエトロとともにジョットの様式をシエナにもたらしました。シエナ市庁舎(プッブリコ宮殿)のフレスコ画が最も重要な作品です。
ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ1427年没。ベルリン国立美術館によれば、国際ゴシック様式を代表するイタリアの巨匠の一人です。1422年にフィレンツェの画家組合に加わり、1423年にストロッツィ家の祭壇画《東方三博士の礼拝》を描きました。
ピサネッロ1395年以前に生まれ、1455年頃没。ピサの商人とヴェローナ出身の母の子で、ヴェローナで修業し、君主たちに称賛されました。ロンドン・ナショナル・ギャラリーによれば、とりわけ動物の描写で有名でした。
ランブール兄弟ナイメーヘン出身のポール、ジャン、エルマンの3兄弟で、1416年に亡くなりました。ベリー公ジャンのために《美しき時祷書》と《いとも豪華なる時祷書》を描き、J・ポール・ゲティ美術館は同時代の北ヨーロッパを代表する芸術家と呼んでいます。
シュテファン・ロッホナー1451年没。ロンドン・ナショナル・ギャラリーが国際ゴシック様式の代表的な画家に挙げるドイツの画家です。ここで紹介している2点のパネルは、どちらもケルンのヴァルラフ・リヒャルツ美術館にあります。
ジョヴァンニ・ディ・パオロ1417年までに活動を始め、1482年没。サッセッタに次ぐ15世紀前半のシエナの主要な画家で、生き生きとした物語の場面で知られます。ロンドン・ナショナル・ギャラリーは国際ゴシック様式の代表的な画家の一人に挙げています。
ジョットの絵画
ロンドン・ナショナル・ギャラリーによれば、集中力と重々しさがジョットの様式の特徴で、彼の人物は立体的な重みをもち、説得力のある建築空間に立っています。ワシントン・ナショナル・ギャラリーは、その革新が1世紀後にイタリア・ルネサンスへと発展したと述べています。
国際ゴシック様式の絵画
ロンドン・ナショナル・ギャラリーによれば、14世紀後半から15世紀半ばにかけて、装飾的な文様、豊かな色彩、金を特徴とする宮廷風の様式がフランス、イタリア、ボヘミアに広がり、ジョヴァンニ・ディ・パオロはその代表的な画家の一人です。ハーバード美術館によれば、フィレンツェでは、1401年に10年間のスペイン滞在から戻ったスタルニーナが、スペイン絵画の鮮やかな色彩とトスカーナの空間感覚を結びつけました。
シエナ派のゴシック絵画
ロンドン・ナショナル・ギャラリーによれば、ドゥッチョは大きな工房を営み、何世代ものシエナの画家を育てました。アムステルダム国立美術館によれば、その洗練された線の様式は弟子たちの作品にも受け継がれています。ジョヴァンニ・ディ・パオロの祭壇画は15世紀になってもシエナの伝統的な形式に従っています。ハーバード美術館は、オッセルヴァンツァの画家による受難の場面を、同時代のシエナ絵画のなかでも特に優れたものと呼んでいます。
ゴシック美術の特徴と見分け方

金地の背景
ウフィツィ美術館によれば、金地の背景は神の顔の神々しい光を表し、場面を地上の時間と空間の外に置いています。チマブーエの工房は、金地と光輪に刻印で模様を打ち出しました。ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、色彩と金の豊かな使い方を国際ゴシック様式の特徴に挙げています。
サンタ・トリニタの聖母、チマブーエ

細長い人物と流れる線
長い群青の衣をまとい、先が黒い大きな白い翼をもつ、ほっそりした天使たちに注目してください。ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、細長い人物と、流れるような線で描かれた衣のひだを、ゴシックの絵画と彫刻の特徴に挙げています。
ウィルトンの二連祭壇画、作者不詳(イギリスまたはフランスの画家)

感情をこめた物語
会葬者はそれぞれに違う悲しみ方をし、空では天使までもが泣き叫んでいます。ゲッティのAATは感情のこもった物語性をゴシック美術の特徴に数え、ロンドン・ナショナル・ギャラリーはジョットの人物の表情豊かな性格を指摘しています。
キリストの哀悼、ジョット・ディ・ボンドーネ

新しい重みと空間
ジョットの聖母には確かな量感があり、玉座が聖母のまわりに奥行きのある空間をつくり出しています。ロンドン・ナショナル・ギャラリーはジョットの人物の立体的な重みと説得力のある建築空間を特筆し、ワシントン・ナショナル・ギャラリーは、その革新が1世紀後にルネサンスへ発展したと述べています。
オニサンティの聖母(荘厳の聖母)、ジョット・ディ・ボンドーネ

宮廷風の細部
暗い森の中に、猟犬、野ウサギ、鳥、さらには熊を探してみてください。ロンドン・ナショナル・ギャラリーは国際ゴシック様式を、装飾的で色彩豊かで、自然の細部が美しく観察された様式と説明し、この絵に見られるピサネッロの緻密な細部をヤン・ファン・エイクにたとえています。
聖エウスタキウスの幻視、ピサネッロ

祈祷書の中の絵
最もよく知られたゴシックの絵のなかには、本のページに描かれたものがあります。ゲッティのAATによれば、この様式は写本装飾で花開き、コンデ美術館は、《いとも豪華なる時祷書》の暦の場面が、今日の私たちが抱く中世のイメージを形づくったと述べています。
ベリー公のいとも豪華なる時祷書:5月、ランブール兄弟
ゴシック美術の前と後:美術史の流れ
ゴシック美術1150年頃〜1500年代
ルネサンス美術1400年頃〜1600年頃
北方ルネサンス15〜16世紀
マニエリスム1520年頃〜1600年頃
バロック美術1590年頃〜1750年頃
ゴシック美術とロマネスク、ルネサンスの比較
| 比較項目 | ロマネスク美術 | ゴシック美術 | ルネサンス美術 |
|---|---|---|---|
| 年代 | 10〜13世紀 | 1150年頃〜1500年代 | 1400年頃〜1600年頃 |
| 建築 | 太い柱の上の半円アーチ、重厚でずんぐりした教会 | 尖頭アーチ、細い支柱、流れるような狭間飾り | 古代ギリシャ・ローマの建築の復興 |
| 絵画 | 信者に教えを説く教会のフレスコ画 | 金地の祭壇画、十字架像、壁画、装飾写本 | 重さと立体感のある人物と、説得力のある空間 |
| 人物 | — | 細長く、流れるような衣をまとう | 古代の美術を手本にした人物 |
| 代表的な画家 | — | チマブーエ、ジョット、ドゥッチョ、シモーネ・マルティーニ、ランブール兄弟 | マザッチョ、レオナルド、ミケランジェロ、ラファエロ |
ゴシック美術と中世絵画の代表作と画家の一覧
ゴシック美術の有名な作品を、作者、制作年、現在の所蔵先とともにまとめました。
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| 作品名 | 画家 | 制作年 | 技法・素材 | サイズ | 所蔵先 | 都市 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ベリー公のいとも豪華なる時祷書:5月 | ランブール兄弟 | 1416年以前 | テンペラ・ヴェラム | 29 × 21.2 cm(ページ) | コンデ美術館(シャンティイ城) | シャンティイ |
| マネッセ写本:鷹狩りをするコンラディン王(第7葉表) | 作者不詳 | 1300年頃〜1340年 | 羊皮紙に彩飾 | 35.5 × 25 cm(ページ) | ハイデルベルク大学図書館 | ハイデルベルク |
| 使徒ペトロとアンデレの召命 | ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ | 1308〜1311年 | テンペラ・板 | 43.3 × 46.2 cm | ワシントン・ナショナル・ギャラリー | ワシントンD.C. |
| モルガン聖書(マチェヨフスキ聖書)第3葉裏 | 作者不詳 | 1244年頃〜1254年 | 羊皮紙に彩飾 | 39 × 30 cm(ページ) | モルガン・ライブラリー&ミュージアム | ニューヨーク |
| オニサンティの聖母(荘厳の聖母) | ジョット・ディ・ボンドーネ | 1306年頃〜1310年 | テンペラ・板 | 325 × 204 cm | ウフィツィ美術館 | フィレンツェ |
| ウィルトンの二連祭壇画 | 作者不詳(イギリスまたはフランスの画家) | 1395年頃〜1399年 | 卵テンペラ・板 | 各36.8 × 26.7 cm | ロンドン・ナショナル・ギャラリー | ロンドン |
| エステ家の公女の肖像 | ピサネッロ | 1425年頃〜1450年 | 油彩・ポプラ板 | 43 × 30 cm | ルーヴル美術館 | パリ |
| キリストの哀悼 | ジョット・ディ・ボンドーネ | 1305年頃 | フレスコ | 200 × 185 cm | スクロヴェーニ礼拝堂 | パドヴァ |
| サンタ・トリニタの聖母 | チマブーエ | 1280年頃〜1300年 | テンペラ・板 | 385 × 223 cm | ウフィツィ美術館 | フィレンツェ |
| 都市における善政の効果 | アンブロージョ・ロレンツェッティ | 1330年代 | フレスコ | 約200 × 770 cm(壁面) | シエナ市庁舎(プッブリコ宮殿) | シエナ |
| 聖エウスタキウスの幻視 | ピサネッロ | 1438年頃〜1442年 | テンペラ・板 | 54.8 × 65.5 cm | ロンドン・ナショナル・ギャラリー | ロンドン |
| ベリー公の美しき時祷書:旅をするベリー公(第223葉裏) | ランブール兄弟 | 1405〜1409年 | テンペラ・金・インク・ヴェラム | 23.8 × 17 cm(1葉) | メトロポリタン美術館 | ニューヨーク |
| ベリー公の小時祷書:巡礼に出発するベリー公(第288葉裏) | ランブール兄弟 | 1412年頃〜1414年 | 羊皮紙に彩飾 | 21.5 × 14.5 cm(ページ) | フランス国立図書館 | パリ |
| キリストの嘲弄 | チマブーエ | 1280年頃 | テンペラ・金地・ポプラ板 | 25.8 × 20.3 cm | ルーヴル美術館 | パリ |
| 薔薇垣の聖母 | シュテファン・ロッホナー | 1440年代 | 油彩・テンペラ・オーク板 | 50.2 × 39.6 cm | ヴァルラフ・リヒャルツ美術館 | ケルン |
| ウズラの聖母 | ピサネッロ | 1420年頃 | テンペラ・板 | 54 × 32 cm | カステルヴェッキオ美術館 | ヴェローナ |
| 参事会員の聖母 | リュイス・ダルマウ | 1443〜1445年 | 油彩・板 | 316 × 312.5 cm | カタルーニャ美術館 | バルセロナ |
| サンタ・クローチェの磔刑像 | チマブーエ | 1288年以前 | テンペラ・板 | 433 × 390 cm | サンタ・クローチェ聖堂付属美術館 | フィレンツェ |
| トシェボニの祭壇画:オリーブ山のキリスト | トシェボニの祭壇画の画家 | 1380年頃 | 板絵 | 132 × 92 cm | プラハ国立美術館 | プラハ |
| 磔刑(ストラスブールの磔刑) | ジョット・ディ・ボンドーネ(工房) | 1315年頃 | テンペラ・金箔・板 | 45.3 × 32.7 cm | ストラスブール美術館 | ストラスブール |
| クレーヴォレの聖母 | ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ | 1283年頃 | テンペラ・板 | 89 × 60 cm | シエナ大聖堂付属美術館 | シエナ |
| 聖ニコラウスと聖カタリナ、寄進者のいる聖母子 | ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ | 1400年頃〜1410年 | テンペラ・金・ポプラ板 | 133.4 × 115 cm | ベルリン絵画館 | ベルリン |
| 最後の審判 | シュテファン・ロッホナー | 1435年頃 | 油彩・金・オーク板 | 124 × 172 cm | ヴァルラフ・リヒャルツ美術館 | ケルン |
| 薔薇園の聖母 | ステファノ・ダ・ヴェローナまたはミケリーノ・ダ・ベゾッツォ | 1420年 | テンペラ・板 | 129 × 95 cm | カステルヴェッキオ美術館 | ヴェローナ |
| イザベラ・スチュワートの時祷書:聖堂の聖母子(第141葉裏) | ロアンの画家 | 1417年頃〜1431年 | 羊皮紙に彩飾 | 25 × 18.3 cm(ページ) | フィッツウィリアム美術館 | ケンブリッジ(イギリス) |
ゴシック美術と中世絵画についてのよくある質問
ゴシック美術とは?
ゴシック美術とは、12世紀半ばから16世紀までのヨーロッパ中世後期の美術様式で、建築では尖頭アーチ、絵画や彫刻では流れるような衣をまとった細長い人物が特徴です。ロンドン・ナショナル・ギャラリーによれば、この言葉はゲルマン系の民族ゴート族に由来し、最初はイタリア人が北ヨーロッパの美術を指して使いました。今ではおよそ12〜16世紀に北ヨーロッパでつくられた建築と美術を指します。ゲッティ研究所の『美術・建築シソーラス(AAT)』は、この様式の始まりを12世紀半ばの北フランスとしています。
出典: ロンドン・ナショナル・ギャラリー用語集:Gothic · ゲッティ研究所AAT:Gothic (Medieval)
ゴシック美術の絵画の特徴は?
ゴシック美術の絵画の特徴は、細長い人物、流れるような衣の線、鮮やかな色彩と金、精緻な細部で、そのほとんどが宗教の物語を描いています。ゲッティのAATは、ゴシックのステンドグラス、祭壇画、壁画、写本に典型的な特徴として、鮮やかな色彩、細長いプロポーション、精緻な細部、感情のこもった物語性を挙げています。ロンドン・ナショナル・ギャラリーも細長い人物と流れるような線の衣を特徴とし、イタリアではこうした絵の多くが木の板に卵テンペラで描かれたと説明しています。
出典: ゲッティ研究所AAT:Gothic (Medieval) · ロンドン・ナショナル・ギャラリー用語集:Gothic · ロンドン・ナショナル・ギャラリー用語集:Tempera
ゴシック美術はいつの時代?時代背景は?
ゴシック美術の時代は、12世紀半ばから16世紀までの中世後期です。画家たちは主に教会と君主の宮廷のために制作しました。ゲッティのAATによれば、この様式は12世紀半ばに北フランスで始まり、その後の100年で西ヨーロッパの各地に広がり、地域によって異なる時期にルネサンスへと移り変わりました。ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、宮廷風の後期の段階である国際ゴシック様式を14世紀後半から15世紀半ばとし、フィレンツェのマザッチョとドナテッロによる初期ルネサンスを15世紀としています。
出典: ゲッティ研究所AAT:Gothic (Medieval) · ロンドン・ナショナル・ギャラリー用語集:International Gothic · ロンドン・ナショナル・ギャラリー用語集:Early Renaissance
ゴシック美術はどこで始まった?
ゴシック美術は12世紀半ばの北フランスで、大聖堂の建築から始まりました。ゲッティのAATによれば、この様式は大聖堂建築の中で発展しました。尖頭アーチとフライング・バットレスによって広大な内部空間や塔、尖塔、そびえ立つ高さが可能になり、様式はやがてステンドグラス、彫刻、精巧な祭壇画、壁画、写本装飾で花開きました。イタリアの画家たちは独自の形でこれを取り入れ、ロンドン・ナショナル・ギャラリーによれば、ドゥッチョの芸術はフランスのゴシックの金工品から深い影響を受けています。
ゴシック美術の代表的な画家は?
ゴシック美術の代表的な画家は、14世紀イタリアのジョット、ドゥッチョ、シモーネ・マルティーニ、それに先立つチマブーエ、そしてフランスのランブール兄弟です。ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、ジョットを「イタリア絵画をビザンティン様式から解放した第一人者」、ドゥッチョを14世紀イタリアで最も重要な画家の一人、シモーネ・マルティーニを14世紀最大の画家の一人と呼んでいます。ウフィツィ美術館はチマブーエを13世紀後半の中部イタリアで最も重要な画家とし、J・ポール・ゲティ美術館はランブール兄弟を同時代の北ヨーロッパを代表する芸術家としています。
出典: ロンドン・ナショナル・ギャラリー:Giotto · ロンドン・ナショナル・ギャラリー:Duccio · ロンドン・ナショナル・ギャラリー:Simone Martini · ウフィツィ美術館:Cimabue and the Santa Trinita Maestà · J・ポール・ゲティ美術館:The Belles Heures of Jean de France, Duc de Berry · ロンドン・ナショナル・ギャラリー用語集:International Gothic · ベルリン絵画館(ベルリン国立美術館)(ドイツ語)
ゴシック美術の代表作は?
ゴシック美術の代表作には、ランブール兄弟の《ベリー公のいとも豪華なる時祷書》、ドゥッチョの《マエスタ》、ジョットの《オニサンティの聖母》、《マネッセ写本》、《ウィルトンの二連祭壇画》があります。《いとも豪華なる時祷書》はシャンティイのコンデ美術館、ドイツ語圏の宮廷恋愛詩を集めた《マネッセ写本》はハイデルベルク大学図書館、《オニサンティの聖母》はフィレンツェのウフィツィ美術館、《ウィルトンの二連祭壇画》はロンドン・ナショナル・ギャラリーにあります。《マエスタ》は、ドゥッチョがシエナ大聖堂の主祭壇のために描いた祭壇画です。ジョットがパドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂に描いたフレスコ画の連作もよく知られています。
出典: コンデ美術館(シャンティイ城):Les Très Riches Heures du duc de Berry · シャンティイ城:exhibition Les Très Riches Heures du duc de Berry(フランス語) · ユネスコ「世界の記憶」:Codex Manesse(フランス語) · ワシントン・ナショナル・ギャラリー(Google Arts & Culture) · ロンドン・ナショナル・ギャラリー:Duccio · ウフィツィ美術館(Google Arts & Culture) · ロンドン・ナショナル・ギャラリー:Giotto · ロンドン・ナショナル・ギャラリー:The Wilton Diptych
中世絵画とは?ゴシック美術との関係は?
中世絵画とは、5世紀からルネサンスまでの中世ヨーロッパの絵画のことで、ゴシック美術はその後期、12世紀半ばからの段階にあたります。ゲッティのAATは、中世を5世紀のキリスト教化したローマ帝国から、国によって13〜15世紀に始まったルネサンスまでとし、ゴシックの始まりを12世紀半ばとしています。ゴシックの前にはロマネスクがあり、ロンドン・ナショナル・ギャラリーによれば、13世紀にゴシックがこれに取って代わりました。
出典: ゲッティ研究所AAT:Medieval (European) · ゲッティ研究所AAT:Gothic (Medieval) · ロンドン・ナショナル・ギャラリー用語集:Romanesque
中世美術とルネサンス美術の違いは?
中世後期のゴシック美術の画家たちが様式化された細長い人物を金地の前に置いたのに対し、15世紀のフィレンツェに始まるルネサンス美術の画家たちは、古代ギリシャ・ローマの美術を復興させ、人物に重さを与えて説得力のある空間に置きました。ロンドン・ナショナル・ギャラリーによれば、マザッチョとドナテッロの初期ルネサンスの様式では、人物はより重く立体的になり、人物のいる空間もより説得力をもって組み立てられるようになりました。変化はゆるやかで、ゲッティのAATによれば、ゴシックは地域ごとに異なる時期にルネサンスへと移りました。
出典: ロンドン・ナショナル・ギャラリー用語集:Early Renaissance · ロンドン・ナショナル・ギャラリー用語集:Renaissance · ゲッティ研究所AAT:Gothic (Medieval)
国際ゴシック様式とは?
国際ゴシック様式とは、14世紀後半から15世紀半ばにかけてヨーロッパ中に広がった、装飾的な文様、豊かな色彩、金を特徴とする宮廷風の絵画様式です。ロンドン・ナショナル・ギャラリーによれば、主にフランス、イタリア、ボヘミアの宮廷で描かれ、空間的には不合理なことが多い一方で、自然の細部が美しく観察されています。ランブール兄弟の《ベリー公のいとも豪華なる時祷書》、同館がヤン・ファン・エイクの細密さにたとえるピサネッロの《聖エウスタキウスの幻視》、ベルリンにあるジェンティーレ・ダ・ファブリアーノの聖母子が、この様式をよく示しています。
出典: ロンドン・ナショナル・ギャラリー用語集:International Gothic · ロンドン・ナショナル・ギャラリー:The Vision of Saint Eustace · コンデ美術館(シャンティイ城):Les Très Riches Heures du duc de Berry · ベルリン絵画館(ベルリン国立美術館)(ドイツ語)
ゴシック美術とロマネスク美術の違いは?
先に生まれたのはロマネスク美術です。ロマネスクは半円アーチと重厚でずんぐりした教会を特徴とする様式で、10世紀に始まり、ロンドン・ナショナル・ギャラリーによれば、13世紀にゴシックに取って代わられるまで続きました。ゴシック建築は尖頭アーチと、後期には細い支柱と流れるような狭間飾り(トレーサリー)を特徴とし、絵画や彫刻では人物が細長くなり、衣は流れるように描かれました。ロマネスクの教会の内部は、信者に教えを説くためのフレスコ画で飾られていました。
出典: ロンドン・ナショナル・ギャラリー用語集:Romanesque · ロンドン・ナショナル・ギャラリー用語集:Gothic
ジョットはゴシック?ルネサンス?
ジョット・ディ・ボンドーネ(1265年頃〜1337年)はゴシックの時代に活動しましたが、量感のある生き生きとした人物がルネサンスへの道を開いたため、両方の時代に数えられます。ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、ジョットを「イタリア絵画をビザンティン様式から解放した第一人者」と呼び、説得力のある建築空間に立つ人物の立体的な重みを指摘しています。ワシントン・ナショナル・ギャラリーによれば、その試みはまる1世紀を経てイタリア・ルネサンスへと発展しましたが、ジョット自身はまだビザンティン風の保守的な金地の背景を描いていました。
出典: ロンドン・ナショナル・ギャラリー:Giotto · ワシントン・ナショナル・ギャラリー(Google Arts & Culture)
ゴシック美術のステンドグラスとは?
ゴシック美術のステンドグラスは、大聖堂の窓を飾った色ガラスの図像です。ゲッティのAATによれば、ゴシック様式は尖頭アーチとフライング・バットレスでそびえ立つ高さを実現した大聖堂建築の中で発展し、石や絵具、ガラスによる複雑で精緻な図像を生み出しました。ステンドグラスでも、祭壇画や写本と同じく、鮮やかな色彩、細長いプロポーション、精緻な細部、感情のこもった物語性が典型的な特徴です。当サイトのゴシック美術の作品は主に絵画と装飾写本で、中世のガラス作品も一部含まれます。
中世の絵はなぜ下手に見える?
中世の絵が「下手」に見えるのは、目に見えるとおりに写すことを目指していなかったからです。ウフィツィ美術館によれば、ビザンティンの伝統では、イコンは形と象徴が一体となった聖なる像でした。チマブーエの《サンタ・トリニタの聖母》の金地は神の顔の神々しい光を表し、場面を地上の時間と空間の外に置いています。旧約の預言者たちも、象徴的に画面の下に置かれています。ロンドン・ナショナル・ギャラリーによれば、やがてジョットがイタリア絵画をビザンティン様式から解放し、人物に立体的な重みを与えました。ワシントン・ナショナル・ギャラリーは、この試みが1世紀後にイタリア・ルネサンスへと発展したとしています。
出典: ロンドン・ナショナル・ギャラリー:Giotto · ワシントン・ナショナル・ギャラリー(Google Arts & Culture) · ウフィツィ美術館:Cimabue and the Santa Trinita Maestà
ゴシック美術はパブリックドメイン?無料でダウンロード・商用利用できる?
はい。ゴシック美術の有名な作品は1245年頃から1450年の間につくられたもので、近代的な著作権が生まれる何世紀も前の作品です。アメリカでも、著作権が作者の死後70年で切れる日本やEUなどの国でもパブリックドメインです。当サイトのゴシック美術のコレクションには、ゴシック建築を描いた後世の版画や素描も含まれ、それぞれの作品ページに制作年を記しています。無料でダウンロードでき、商用利用を含めてどんな目的にも使えますが、美術作品の写真について独自のルールを設けている国もあるため、販売や出版の前に商用利用のページで確認してください。
有名な絵画の選び方
ここで紹介する有名な作品は、世界で最も広く知られているゴシック美術の作品です。知名度は、その作品を取り上げた百科事典の記事が何言語にあるかで測り、2026年11月に確認しました。1人の画家につき3点までです。写本と祭壇画は1点として数え、《ベリー公のいとも豪華なる時祷書》《マネッセ写本》《モルガン聖書》《美しき時祷書》《小時祷書》は1ページずつ、ドゥッチョの《マエスタ》とトシェボニの祭壇画は1枚のパネル、アンブロージョ・ロレンツェッティの善政のフレスコ画は1面の壁を掲載しています。
対象は、当サイトのカタログ、所蔵する美術館、またはWikidataがゴシック美術に分類する作品と、美術様式の年表でゴシックの画家に数えているジョットとドゥッチョの作品です。評価が並んだ場合は、よく知られた画家の作品、次に古い作品の順に並べています。シモーネ・マルティーニの《受胎告知》やジェンティーレ・ダ・ファブリアーノの《東方三博士の礼拝》など、自由に使える写真がどれも額縁まで写している有名な作品は除いています。
制作年、サイズ、所蔵先は、各美術館の記録とWikidataに基づいています。
誤りに気づいたらお知らせください。確認して訂正します。































































































